徳島からはじめる「ケアと医療と暮らしの輪」開催報告

 このたび、「ケアと医療と暮らしの輪」(https://careno-wa.net/)に参加いたしました。会場には、医療・介護・福祉・行政関係者、そして地域の皆さまが集まり、互いの立場を越えて語り合う温かな雰囲気に包まれていました。そこには、「地域の暮らしを共に支える」という共通の思いがあり、まさに“ケアの輪”が広がっていることを実感いたしました。

 会の前半では、病院での身体拘束ゼロを目指す取り組みや、「寝たきりにしないリハビリテーション」を通じて、病院が地域の福祉にどのように関わっていくかを学びました。病院の役割を単なる治療の場にとどめず、患者さんの「その人らしい暮らし」へとつなげていく姿勢に、深い感銘を受けました。こうした実践は、地域における医療の在り方そのものを問い直す大切な契機であると感じました。

 また、医療的ケア児が社会の中で自らの居場所を持つことの意味や意義について学びました。医療が単に身体を支えるだけでなく、社会参加や生きる力を支援するものであることを改めて実感しました。さらに、ユース世代の孤立を防ぐ取り組みについての報告では、「地域に住んでいても、私たちが目を向けなければ、まるでそこに存在していないように思えてしまう」という言葉が印象的でした。地域に暮らす誰一人として取り残さない。その視点こそが、これからの地域包括ケアの基盤になるのだと感じました。

 続いて、鞆の浦・神山町・海陽町の事例を通じて、病院や診療所が地域にどのように溶け込み、住民と共に医療を育んでいるかを学びました。地域の特性に応じて形を変えながらも、そこに共通しているのは「人のつながり」を大切にする姿勢でした。医療は地域に生きる人々との信頼関係の上に成り立つという原点を再確認いたしました。

 また、オランダ発の「ポジティヴヘルス」についてのお話では、“健康とは評価ではなく対話のプロセスである”という考え方が紹介されました。数値では測れない「生きる力」や「意味」を共に見つめることが、ケアの実践につながるという視点は非常に示唆に富んでいました。

 さらに、地域で活動する医学部生たちの発表も心強いものでした。彼らが地域に入り、人々と関わる中で医師としての志を育んでいる姿には、四国のプライマリケアの未来への希望を感じました。

 最後に取り上げられた「Beyond ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」では、“決定すること”よりも“対話を重ねるプロセス”の重要性が強調されました。人生の最終段階におけるケアは、選択そのものよりも、互いに理解し合う過程が大切であるという考えに深く共感しました。

 今回の会を通じて、医療・福祉・地域がともに手を取り合い、「誰も取り残さない社会」を目指す実践が確かに広がっていることを感じました。次回は、より多くの方にこの“輪”に加わっていただき、共に学び、語り合い、つながりを深めていただければ幸いです。(海南病院 國永直樹)




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